「ありがとう」
「ありがとう」 笹田雪絵
私決めていることがあるの。
この目が物をうつさなくなったら目に、
そしてこの足が動かなくなったら、足に
「ありがとう」って言おうって決めているの。
今までみえにくい目が一生懸命見よう、見ようとしてくれて、
私を喜ばせてくれたんだもん。
いっぱいいろんな物素敵な物見せてくれた。
夜の道も暗いのにがんばってくれた。
足もそう。私のために信じられないほど歩いてくれた。
一緒にいっぱいいろんなところへ行った。
私を一日でも長く、喜ばせようとして
目も足もがんばってくれた。
なのに、見えなくなったり、歩けなくなったとき
「なんでよー」なんて言ってはあんまりだと思う。
今まで弱い弱い目、足がどれだけ私を強く強くしてくれたか。
だからちゃんと「ありがとう」って言うの。
大好きな目、足だからこんなに弱いけど大好きだから
「ありがとう。
もういいよ。休もうね」って言ってあげるの。
多分誰よりもうーんと疲れていると思うので・・・。
でもちょっと意地悪な雪絵は
まだまだ元気な目と足に「もういいよ」とは絶対に言ってあげないの。
だってみたい物、行きたいところいっぱいあるんだもん。
今までのは遠い遠い未来のお話でした。
「ありがとう」
すのうレター より整形して引用させていただきました。
http://www.gokuraku-net.org/snow/
http://www.gokuraku-net.org/snow/kibunn-arigato.htm
笹田雪絵(雪絵ちゃん)
中学二年の時に、手足が突然動かなくなる神経性の難病、「MS(多発性硬化症)」となり、闘病の傍らエッセイや詩を多く書きました。雪絵ちゃんが残したエッセイや詩は今も多くの人達に愛や希望を与えています。